地方公務員獣医師への転職をお考えの方からよくあるご質問

仕事内容

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地方公務員獣医師職場への転職を検討している方からよく寄せられるご質問をご紹介します。
適宜、追加していきますね。

自治体の職員募集に「衛生監視」とか「衛生(食品)」って見かけるけど、これって獣医師の募集とどう違うの?

食品衛生監視員として募集している、という意味です。
食品衛生監視員についてはこちらの記事を参考にしてください。

「獣医さんなら知っておきたい、食品衛生監視員はこんな仕事」

都市部の動物病院に勤めてたので今、都市部暮らし。引っ越し大変なんで都市部の自治体受けようと思ってるけど…。

転職で大きなハードルになるのは、引っ越しですよね。
お金も手間もいっぱいかかるから、できれば引っ越ししないで転職したい。
ただ、地方公務員の場合はちょっと事情が違いますよ。

まずお金。
多くの自治体で赴任旅費制度があります。
採用後6月あたりに支給されます。
後払いにはなりますが、引っ越し代を補う程度の金額が支給されることが多いようです。

そして新居。
どの自治体も勤務先に程近い職員アパートがありますし、なくても家賃補助制度があります。
だからどんだけ遠くの自治体に決めたって、引っ越しのお金と転居先に限っては、そう心配する必要はないのです。

各種制度の中身は自治体によって大きく違います。なので、詳しい内容は受験先の自治体に是非確かめてみてください。

引っ越しが面倒なんで都市部にした。
そういう決め方、ダメじゃないです。けど、転職ついでに心機一転、地方のうまいものや自然を満喫しながら、家畜生産が盛んな地方で家畜衛生やと畜衛生でもやってみっか、なあんて切り口もあっていいような気がしますね。

特にいろんな地方の食べ物やアウトドアが好きな人には、そんな転職もお勧めしますよ。

家畜衛生やと畜衛生。今まで頭になかったけど、ぶっちゃけどうなの?

家畜衛生、と畜衛生。
断言します。

楽しいです。(笑)
(記事「私が体験した家保、食検、保健所はこんなところ」もご一読下さい。)

小動物臨床やってた人なら、相手が家畜に変わるだけのことで、獣医の本業である動物の診断を引き続き修得し発揮できる場所ですから、獣医師としての楽しみを感じることができますよ。

保健所って、どうですか?

保健所に行くと、確かに動物関係の仕事もあります。
ですが、主には食品衛生に関する仕事で、時に旅館・ホテル、理容師、美容師の営業許可やこれら業種の苦情関係の仕事を担当することになりますね。

動物の診断みたいな仕事とは全く無縁なので、これには抵抗感があるでしょうね。
でもしょうがないんですよ。

保健所はこういった生活に密着した営業がきちんと行われるように監視し、指導する、紛れもないお役所なのです。
そしてその保健所が獣医さんを雇っているのは、国の法律で定める食品衛生監視員と狂犬病予防員を任命して、食品衛生法と狂犬病予防法に基づく仕事をしっかりとやってもらうためなんです。

一方、狂犬病予防法を除く動物関係や、旅館・ホテルや理容・美容といった生活衛生関係の立入検査や指導は、獣医さんにやらせなさい、とは国の法律には書いてない。
けど、獣医さんに保健所の職員になってもらったんだから、保健所の一員として一緒に、動物関係はもちろん、ホテル・旅館や理容師・美容師なんかの生活に密着した営業衛生仕事もやってもらう。

ただでさえ人手不足な保健所職場。
国家資格を持って同じような境遇で保健所で働いている薬剤師さんだって頑張ってやってるのに、それは獣医の仕事ではありません!なんて言える訳ありません。

食品衛生監視員と狂犬病予防員。
任命職種のうんちくは、まあ、後にして。
動物案件と生活衛生関係業種の許可事務と衛生指導、そして苦情処理。
あまたの法令や事例集をどっさり両手に抱えて組織の上司や営業者さん、一般住民の皆さんへの対応に日々大汗と冷や汗をかきまくっているのが、保健所の獣医師です。

やだなあ、と思うあなたには、家畜衛生業務として獣医師を募集している市を選ぶという選択肢があります。

あるいは一か八か、畜産部局に行きたいです!と言って見るか、ですねえ…。
ひょっとしたら、かなうかも、です。

ただ分かってて欲しいことがひとつ。

食品衛生監視員だって、他の生活衛生業種の監視指導だって、勉強すればするほど、そして場数を踏めば踏むほど、いろんな出来事に遭遇して困り果てている営業者や住民の方が再び充実した生活を取り戻すお手伝いをどんどんできるようになります。

「ありがとう。あんたに相談してよかったよ。またなんかあったら頼むね。」
なあんて一言、一回でももらってみてください。
なんやかんやあるけど、この仕事も悪くないな、って思ってもらえること、受け合いますよ。(笑)

公務員になればブラックな仕事環境から抜け出せる?

サービス残業は、まずないでしょう。やった分は基本、代休振り替えか残業代が出ると考えていただいて問題ないと思います。

ただし注意点がひとつ。

役所なんだから一年通じて定時で帰れるんでしょ、なんてことは思わないで下さい。
家保は突然の病性鑑定や立入調査、保健所は食中毒や公衆浴場のレジオネラ症発生、放浪犬や咬傷犬の通報対応など、緊急事案に対応するため突然残業になることがよくあります。

また、緊急呼び出し用のケータイを輪番制で持たされ、ケータイが鳴れば即出動できるよう、所管する管内でケータイ待機することもよくあります。

極めつけは県庁です。

各エリアの事案に対処したり総合調整を行っているので、慢性的な残業労働になるものだと思っていただいて、まあ、間違いないでしょう。

食肉衛生検査所は残業があまり発生しません。
しかし、ゴールデンウィークや年末年始、お盆など、長い連休の前後には、臨時的にと畜場を開場することが多いです。この点もご注意を。

農林分野と衛生分野。配属先の希望は通らないの?

基本、採用時は、配属分野の個人希望は尊重してくれません。

しかし、人手不足を背景にしているのでしょう。
配属されて何年か経った若手職員については、辞められるぐらいなら言うこと聞いてやろう、という雰囲気も、だいぶ出てきたのかなという印象を受けています。

言うだけはタダですよ。

ひょっとしたら、希望がかなうかもしれませんね。(苦笑)

自治体はどこに行っても仕事は同じ?

所管する法律はどこも一緒。家畜伝染病予防法だったり、食品衛生法、と畜場法、動愛法だったり。

けれど決定的に違うのが、地域ニーズです。

各自治体では、この地域ニーズを満足させるように獣医師を配属します。
畜産が盛んな自治体なら家保や食肉衛生検査所の運営のために、たくさんの獣医師が必要になります。
都市部であれば、動物問題の解決や食品の提供・製造・流通施設の監視や旅館・ホテル・公衆浴場、理美容業の監視に多くのマンパワーが要求されます。

また地域ニーズの他に、公設の動物園、水族館等がある自治体であれば、これらの職域での仕事も求められますね。

よく「どこでも一緒なんだから、一番給料高いとこ行こっかな」なんて話を耳にしますね。

けれど腰掛け程度に仕事して脱サラするならともかく、その自治体に長く勤める気が少しでもあるのであれば、行った先で何させられるかぐらいは、ある程度下調べしておくことをお勧めします。

動物病院の狭い人間関係が嫌になったから公務員に転職したい

公務員職場は転勤が必ずあります。なので、たとえどんなに合わない人がいても、相手か自分のどちらかが、必ずいなくなります。
この意味では職場の人間関係が必ずリセットされる公務員の方が気楽かもしれませんね。

しかし、地方公務員獣医師が仕事で対峙しているのは、そこに住む一般住民の方や、その土地でずっと畜産や食品関係で仕事している事業者です。
彼らには転勤なんかありません。

あなたがどんなに転勤しようが、回り回って、いつか必ず再会します。
あなたもその地域に住む一員なのです。
彼らとの繋がりを健全に保ち続けることこそ、地方公務員獣医師として仕事を続けていくための必須要件です。

結局、地方公務員獣医師職場であろうとも、人間関係から逃げては仕事を続けていけないのだと言うことを、どうか肝に命じておいていて下さい。

獣医師免許取るのに2千万近くかかった。地方公務員の安月給では元がとれない

もらえる金額のことを言えば、50代中盤まで勤めても年収800万少々。
求める生活水準は人により様々なので、少ないのかどうかは何とも言えません。

それに地方と首都圏では物価も大きく違うので、いよいよお金の評価は難しいですね。

その学費を自分で奨学金を得て支払った、あるいは親に返さなければいけない、という方は、最初からマイナスの出発を強いられています。
なので、リスクをとってでも開業の道を模索するか、民間企業の門を叩くなど、地方公務員獣医師よりももっと実入りのいい職域に就かれることをお勧めします。

さて、親が払ってくれた、返す必要はない、という方へ。
親御さんはあなたの未来への投資として、払ってくれたはず。
親御さんはあなたからお金を返して欲しくて、あるいはあなたから投資分以上のお金をもらうことを期待して払ってくれたのではないのです。

ただ、あなたが充実した人生を送ってくれることを願っているのです。

私は思います。

お金は必要。けれど、お金だけを物差しにして人生を決めるな、と。

適当に働いて元手貯ったらさっさと辞めて、脱サラしちゃおうかな

大いにあり、ですね。(笑)
踏み台にされてしまう組織の方がダメなんですから。

起業や財テクの才覚のある方は、是非踏み台にしてあげて下さい。
その方が、組織も「良質な人材にとどまってもらえるよう、変わらないといけない」と本気で思うようになってくれるはずです。
私は、それを期待します。

「いただきまーす!」(無償配布)
本作品は2020/4/19から2022/3/6までの間に「小説家になろう」にて連載され、通算4,883人、13,530PVと大変多くの方々からご愛顧いただきました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
この度、「小説家になろう」を卒業させていただき、読みやすい縦書きに再編集し、電子書籍としました。
食肉衛生検査所や保健所って、ぶっちゃけどんな感じなんだろ…。
そんなあなたに、少しでも何かを感じてもらえたら。
そして今、現在公衆衛生獣医師として勤務している方の、何かのきっかけ作りになれたらいいな。
そんな思いを込めて、お届けします。(全6巻)
いただきまーす! 第1巻
いただきまーす! 第2巻
いただきまーす! 第3巻
いただきまーす! 第4巻
いただきまーす! 第5巻
いただきまーす! 第6巻

「自分で仕事して、今度は自分の舌で確かめる。先生方もなかなか乙な商売だねえ。」
(第1巻第3話)

「居場所を見つければ、迷いは消える。そういう人間は、強いものだよ。」
(第2巻第18話)

「県職なんか辞めちまえよ。」
そう言い放つと吉田は、あー、しゃべったらちょっとスッキリした、ちょっくらコーヒー取ってくるわ、と立ち上がり、ドリンクバーへ向かった。
(第2巻第28話)

「県職続けるとか辞めるとか、臨床やるとか他の道見つけるとか、そういうのはそのうちぽこっと答えがでちゃったりするもんさ。」
「俺みたいに、な?」
(第3巻第47話)

「俺はよ、」
「?」
「獣医さんにはあんまりいい印象ねえんだ。」
「え?」 思わず運転席の安部を見る。 「ちょっと許可事務覚えたぐらいで課の仕事全部わかったような顔して、保健所なんて獣医の仕事じゃねえ、なあんて抜かす奴を何人も見てきた。」
「じゃあ俺ら薬剤師はなんだっつうの、俺らがこの仕事、薬剤師の仕事だって思ってやってるとでも言いてえのか、ってな。」
「調剤やりたい奴は最初からそっちの道に行くし、行政に来ることなんかねえんだ。ここにいる薬剤師はみんな、こういう仕事やることになるんだろうなって、覚悟を決めてから入ってきてる。」
「役所に勤めてんだから、どこに配属されようが自分の専門分野と関係なかろうが、担当する法令をマスターして事案にあたる。そんなの当たり前のことだ。」
「大体よ、そもそもどんな仕事だろうが、仕事して人様から金もらうんだから、仕事に文句は言わねえし、仕事の手は抜かねえ。そういうのって、薬剤師とか獣医師とか以前に、人として当たり前のことだ。俺はそう思ってる。」
「だからよ、自分でやらせてくれって言って入ってきたくせに、仕事にブータラ抜かす奴見ると腹が立ってしょうがねえのよ。」
(第4巻第63話)

「俺、石野さん、山田さん、津田君。俺らは交代しながら郷浜の検査所と保健所を行き来する。みんながいてくれれば、たとえ俺が郷浜食検に転勤になったって、他の誰かが郷浜の小学生にずっと伝え続けてくれる。俺はここ郷浜で、そんな息の長い仕事をずうっとやり続けたい。そしてその先に見えてくる景色を見てみたい。そう思って、獣医職の人事システムの地域コミュニケーション担当に手を挙げたんだ。」
(第5巻第69話)

長沢がふう、と小さく息を吐き、一平に微笑む。
「そんときそんとき一生懸命考えて、選んだ道の先で後悔したり喜んだり。」
「俺の年になってもその繰り返しなんだ、実際。」
「みんなおんなじさ。」
そう言うと長沢が手元のコピー用紙を立ててトントンと揃え、一平に渡した。
(第6巻第84話)

「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」(無償配布)
本作品は2019/5/8から2019/8/3までの間に「小説家になろう」にて連載され、通算3,147人、6,388PVと大変多くの方々からご愛顧いただきました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
この度、「小説家になろう」を卒業させていただき、読みやすい縦書きに再編集し、電子書籍としました。
平成の時代に全国の自治体で起こっていた団塊世代の大量退職。
その時、食肉衛生検査所で何が起きていたか。
平成の時代の食肉衛生検査所のリアルな姿を、食肉衛生検査所の獣医師として長く勤めていた私がお届けします。
「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」


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