(「子育て世代と再任用職員が職場活性化の鍵」の続きです。)
まずは再任用職員から。
目の前では65歳までの定年延長が決まりましたね。
仕事分担の見直しを考えるにあたり、まず、再任用職員として食肉衛生検査所に勤務している先輩方の働きぶりや他の年代の職員との関係性について私が感じたことを挙げてみます。
ひとつめはと畜場での現場検査。
酷暑や厳寒期は若手でもそうとうつらいものですが、体力的にシフトをこなせないという方はいませんでした。しかし、老眼が進んで照明が暗いと手元がよく見えない、とっさの動きが鈍くなる、手首や足腰を痛めると長引く、といった加齢による生理的変化は、みなさんが訴えていました。そのため、十分な休養や通院加療がとれるよう、現場シフトや勤務日程への配慮が必要でした。
ふたつめは事務室での知識と判断力。
こちらは全く問題ありません。話の振り方に気を付けさえすれば、どなたも新たな案件にも耳を傾け、助言してくれました。
三つ目は他の年代層の職員との協調性。
これが最も個人差が大きかったです。
もう現役を引退したのだから、責任が生じる仕事はやりたくない、と畜検査しかやりませんと言う人。
逆に現役時代、特に管理職時代のクセが抜けず、万事手も出すしクチも出す人。
四つ目に気になったのは、どの方も現役時代に経験していない業務には手を出したがらないこと。特に現役時代に経験のなかったと畜場や食肉処理場のHACCP監視指導は嫌われていました。
加えて試験室内検査は、若手にお任せします、という態度を決め込む傾向が強かったようでした。
私の勤めていた自治体では、着任した公所でどんな仕事を担当させるかは、それぞれの公所の管理職に任されていました。しかし、再任用職員の配置には厳然たるルールがあり、自宅から通勤可能な公所にしか配置しない方針を貫いていました。
私の経験した再任用職員の方々。
それですべてを論じるつもりはありませんが、このような性向を持った方々に対してどういう仕事をどのように分担してもらうか。
これをお話ししていこうと思います。
まず何より、最初から楽な仕事をもらえるもんなんだ、また、楽な仕事を預けなきゃ、という発想を、労使ともに捨てないといけません。「再任用初年度はまずフルで働くものなんだ」というスタンスに立つことにするのです。
定年を迎える職員のほとんどが各公所の管理職なので、彼らを統括し指導する立場にある県庁主幹課の課長が、こうしたスタンスをあらかじめ明言しておく。
そして先に書いたように、やったことのない仕事には抵抗感がある一方で、自分の経験した仕事には一家言ある方々です。ならば再任用初年度は、体力的事情や家庭事情に配慮しつつ、経験を生かした仕事を分担してもらうのが良い。
食肉衛生検査所が長かった人なら検査所、保健所での経験が豊富なら保健所、県庁が長いならこの際県庁、といった具合です。この場合、自宅から通勤可能な公所に限定してしまうと、他の現役職員との兼ね合いから、経験を活かせる職場に行ってもらうことができない。
なので、勤務する公所を自宅から通勤可能な範囲に限定せず、全県下としたい。
そして現役を終えた先輩だからと遠慮なんかしない。現役職員と同様に、突発した有事案件も含めた時間外対応もお願いし、現役職員と共に働く良き相棒であり、良き助言者として活躍してもらう。
再任用職員は1年契約。勤務公所や仕事の内容は、本人事情や家庭事情を毎年確認した上で、1年ごとに見直せばいいのです。
初年度からご隠居暮らしを決め込んで、自宅から通える公所で軽いルーチンワークしかしたくない、という人には、それでは現役職員のお荷物になるだけです、現役職員と同等に仕事してもらうのがまず出発点です、と、引導を渡しておくのです。
その方が、ああ、公務員職場だって厳しいのは知ってた、勤まりそうもないなら自治体に残るのは諦めないと…。と、思ってくれるはずです。
これができない主幹課の課長は、なんだかんだ言っても、年金をもらえる65歳までのんびり勤められる職場を自分も確保したいだけなんだな、と、後輩職員から陰口を言われてもしょうがないのかなと、私は思います。
(「子育て世代職員にはステップアップの道筋を示す」に続きます)