(「公衆衛生獣医師の人事管理システム構想」の続きです。)
人事ルール設定と同時にやらないといけないのが、人材の確保です。
人材の確保にはふたつあります。人数の確保と、質の確保です。
人数の確保=新規採用者を増やす
現在主流になっているのは奨学金制度、初任給調整手当、インターンシップ(職場体験実習)といったところ。
しかし前の記事でも書きましたが、何せ職場の知名度が低すぎます。
どこだかわかんない、何やってるかわかんない、物がない、不便だとか、悪い情報ほど広がりやすく、良い情報はなかなか広まっていかない。
ここにテコ入れしなければなりません。
またターゲットは、獣医さんとしてやりたい仕事のイメージが固まりつつある現役の獣医師や獣医師になろうとしている人だけでなく、働いてお金をもらって生きていく、ということを意識し始めた中高生など、広く一般の人達を対象とすべきです。
「こんなことを感じながらこんな所でこんな仕事に向き合い、日々はこんな暮らしをしているんだよ。」
こういった、地方で暮らす公務員獣医師の仕事ぶりや暮らしのイメージが作れるような情報を、食肉衛生検査所、保健所、家畜保健衛生所などといった職場ごとに、手を替え品を替え、あらゆる手口で発信し続ける。
これに尽きます。
みんながネットで繋がってる時代です。
動画とかあらゆるメディアを駆使して、バンバンアピールしてください!今どきは国の職員ですら動画発信している時代なんですよ。地方ならではの発信があるはずです。
某県ではウェブ上で現役職員が受験希望者の相談を受け付ける、なんて取り組みも見かけましたね。
また、獣医学生を対象にインターンシップと称して多くの自治体が実施している職場体験実習。
ここでは、きれいごとしか見せてあげないようにしよう、などと考えてはいけません。入ろうかなと考えている人はそんなうわべ事が知りたいのではないのです。
どんな悩みを抱え、どんな苦しみを感じているのか。またその一方で、たとえどんなに小さくささやかなものだとしても、喜びや楽しさを感じる瞬間があったとするなら、それは一体、どんなものだったのか。
そういうことを知りたがっているのです。
今現在その仕事をしている、自分にしか話せないこと。
それを一生懸命考えてあげてください。
実習が終わってしまったらもう会えないかもしれない彼らに、どうかそんな話をしてあげてくださいね。
さらに獣医学生だけでなく現役の獣医師さんにも伝わるように、学会や研修会、雑誌投稿で現場の課題や新機軸となりうる概念や技術の提案をせっせと行い、その分野で「とんがってる」自治体なんだぞとアピールするのです。
本来ならば臨床獣医師さんと同様に、現職の公務員獣医が自分の専門分野を深めるために何らかの形で大学に戻って学生さんと触れ合う。そのぐらいまでにならなければ、獣医学生さんが現場の空気を直接体感することなんかできないのです。
「忙しいから仕事の見直しや組み替えなんて考えるのやめよ。」
「予算がないから調査研究なんてやめよう。」
「学会や研修会出席旅費なんて削っちゃえ。」
「そもそも財政厳しいんだから、調査研究なんて無駄な仕事そのものやめちゃえ。」
こういう声を私はうんざりするほど聞きました。
でもそれをやってしまっては、
「うちは仕事や職場を改善しようなんて気力はありません。既に目の前にあるルーチンワークをただひたすらやっつけている職場ですから、ほっといてください。」
と、全国の同業者や獣医学生に声高らかに宣言しているようなものです。
こんな職場、今働いている獣医さんは受け入れているとしても、これから入りたいと思う獣医さんなんて、いると思いますか?
いいから言われた通りに黙ってルーチンこなしてろ!って、これから入ってくる人達に言うんでしょうかね?
よりよいものへ向かおうとする気力のない技術の職場。
そんなものはいっそ、落ちるところまで落ちて、崩壊してしまう方がいいです。
そしてビジョンのない組織には誰も来ません。
例えば「うちの自治体はfrom farm to table、one healthを実践する獣医師の集団を目指している。だから必ず公衆衛生と家畜衛生の二つを経験させる!」などと宣言し、複数年に渡る明確な育成スケジュールを作成して学生さんへの説明会で提示し、厳格に実施すべきです。
今いる職員の質を底上げ
新規採用者を増やす努力と同時に、今いる職員でもっと仕事を分担してもらえる人はいないのか、もう一度見渡してください。
私は、再任用職員と育休が明けた子育て期の職員に活路があると考えています。
次の記事でさらに書いていきます。
(「子育て世代と再任用職員が職場活性化の鍵」に続きます。)