(「若手の組織への不信感の元凶。それは知識も経験もない上司」の続きです。)
試験検査室内検査の具体的手技は、多くが各職場でマニュアル化されています。最低でも試薬や培地の調合レシピは何らかの書き物で先輩から引き継いでいることが多いです。
けれど、器具・機械の操作法や計量・測定の具体的手技などは、わざわざ明文化しないのが普通です。これらの基本手技をちゃんと引き継げないまま検査を行い、まともな結果が得られずに困惑している未経験者を、私は数多く見てきました。
特に精密機器を使用して行う微量物質の測定検査は、精密機器のセットアップから測定手順、日々のメンテナンス、繊細な抽出・精製操作手技の微妙なコツなど、熟練者について時間をかけて実地で身に付けていかないと絶対に習得できない検査です。
一度もやったことない上司が、経験者不在の検査室でズブの素人にイチからやらせ、期限までにノルマの数をこなせと言う。
全くもって常人の神経ではありません。
各検査について精通した熟練者を常に絶やさない。
その中で後進を育成させ、同時に、その引き継ぎに支障が出ないよう、人事異動を調整するポストの人物に根回ししておく。
これは検査室の管理者が当然行うべき最低限の仕事です。
管理者不在の検査室。
私が直面したのは、検査実務の経験のない者を検査を総括する要職に次々と送り込んだ末の、なれの果ての光景だったのです。
人事権限のある人には、「衛生獣医、木崎勇介」平成23年に描いたような若手職員をもう二度と出さないように心を砕いてほしい。
検査室は、検査技術の引き継ぎが途絶えないような体制作りを決して怠ってはならないのです。
(「若手獣医師が公衆衛生職場に見切りをつけるもうひとつの理由」に続きます。)