職場のメンバーに恵まれ、とても充実した時間を過ごした時期がありました。
そのエピソードは「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」の平成16年に綴っています。
県に入った後すぐ食肉衛生検査所に配属されました。
最初の1~2年は、まあ、こんなもんかな、ぐらいの感覚。
仕事の手を抜いたつもりもないけど、そんなに熱も入らない。
そんなゆるい感覚。
周りの同僚、上司にも大して魅力を感じない。組織そのものになんか全く興味なし。
やがて結婚して子供が生まれ、独り者の時にはなかった色んな出来事にあたふたしているうちに、あっという間に若手筆頭、いや中堅下っ端ぐらいになってしまいました。
その時期に巡り合った若手達と上層部とは、とても馬が合ったのです。ほんとにたまたまです。
そして平成16年エピソードにあるような組織的仕事にみんなで取り組み、作り上げることができました。
今思うと、本当に恵まれた時期だったと思います。
人同士が噛み合うとはこういうことだ、
仕事や職場が楽しくなるとはこういうことだ、という体験をさせてもらったのです。
以来、別の職場に移っても、どこかの局面で自分が楽しくなれそうな一瞬を見つけることができるようになったようです。
色んな嫌な事、苦しい時期がありましたが、その一瞬を糧にしながら、結局二十数年も公務員として働いてこれたのかなと、思ってます。
なんであれ、仕事をしていくと、こうなるといいな、というプランが自分の頭の中に必ず湧き上がってくるものです。
それをすぐに外へぶちまけ、周りが理解してくれない、こいつらダメだと腐ってはいけません。
面子が揃うまではプランをそっと温めておく。
面子が揃い、時機が来たと見極めたのなら、言葉ややり方を慎重に選びながら提案し、実行に移してみる。
これがどうやらコツだったようです。
公務員仕事だって普通の会社の仕事と同じ。
他人から指示されてやらされている仕事を黙々と消化していたって面白くも何ともありません。
自分で、いや自分達で考えてやった仕事がうまくいった時の快感を、ぜひ体験していただきたいものです。
メンバーに恵まれない時期もあります。
でも腐らない。
毎年、人事異動でメンバーがシャッフルされるんですからね。
別の分野に異動したなら、次にその職場に戻ってくる時までプランを密かにあっためときゃいいんです。
「虎視眈々と」日々を過ごす。
おすすめです。(笑)
(「職場を守るためには権謀術数が必要」に続きます。)
「いただきまーす!」(無償配布)
本作品は2020/4/19から2022/3/6までの間に「小説家になろう」にて連載され、通算4,883人、13,530PVと大変多くの方々からご愛顧いただきました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
この度、「小説家になろう」を卒業させていただき、読みやすい縦書きに再編集し、電子書籍としました。
食肉衛生検査所や保健所って、ぶっちゃけどんな感じなんだろ…。
そんなあなたに、少しでも何かを感じてもらえたら。
そして今、現在公衆衛生獣医師として勤務している方の、何かのきっかけ作りになれたらいいな。
そんな思いを込めて、お届けします。(全6巻)
いただきまーす! 第1巻
いただきまーす! 第2巻
いただきまーす! 第3巻
いただきまーす! 第4巻
いただきまーす! 第5巻
いただきまーす! 第6巻
「自分で仕事して、今度は自分の舌で確かめる。先生方もなかなか乙な商売だねえ。」
(第1巻第3話)
「居場所を見つければ、迷いは消える。そういう人間は、強いものだよ。」
(第2巻第18話)
「県職なんか辞めちまえよ。」
そう言い放つと吉田は、あー、しゃべったらちょっとスッキリした、ちょっくらコーヒー取ってくるわ、と立ち上がり、ドリンクバーへ向かった。
(第2巻第28話)
「県職続けるとか辞めるとか、臨床やるとか他の道見つけるとか、そういうのはそのうちぽこっと答えがでちゃったりするもんさ。」
「俺みたいに、な?」
(第3巻第47話)
「俺はよ、」
「?」
「獣医さんにはあんまりいい印象ねえんだ。」
「え?」 思わず運転席の安部を見る。 「ちょっと許可事務覚えたぐらいで課の仕事全部わかったような顔して、保健所なんて獣医の仕事じゃねえ、なあんて抜かす奴を何人も見てきた。」
「じゃあ俺ら薬剤師はなんだっつうの、俺らがこの仕事、薬剤師の仕事だって思ってやってるとでも言いてえのか、ってな。」
「調剤やりたい奴は最初からそっちの道に行くし、行政に来ることなんかねえんだ。ここにいる薬剤師はみんな、こういう仕事やることになるんだろうなって、覚悟を決めてから入ってきてる。」
「役所に勤めてんだから、どこに配属されようが自分の専門分野と関係なかろうが、担当する法令をマスターして事案にあたる。そんなの当たり前のことだ。」
「大体よ、そもそもどんな仕事だろうが、仕事して人様から金もらうんだから、仕事に文句は言わねえし、仕事の手は抜かねえ。そういうのって、薬剤師とか獣医師とか以前に、人として当たり前のことだ。俺はそう思ってる。」
「だからよ、自分でやらせてくれって言って入ってきたくせに、仕事にブータラ抜かす奴見ると腹が立ってしょうがねえのよ。」
(第4巻第63話)
「俺、石野さん、山田さん、津田君。俺らは交代しながら郷浜の検査所と保健所を行き来する。みんながいてくれれば、たとえ俺が郷浜食検に転勤になったって、他の誰かが郷浜の小学生にずっと伝え続けてくれる。俺はここ郷浜で、そんな息の長い仕事をずうっとやり続けたい。そしてその先に見えてくる景色を見てみたい。そう思って、獣医職の人事システムの地域コミュニケーション担当に手を挙げたんだ。」
(第5巻第69話)
長沢がふう、と小さく息を吐き、一平に微笑む。
「そんときそんとき一生懸命考えて、選んだ道の先で後悔したり喜んだり。」
「俺の年になってもその繰り返しなんだ、実際。」
「みんなおんなじさ。」
そう言うと長沢が手元のコピー用紙を立ててトントンと揃え、一平に渡した。
(第6巻第84話)
「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」(無償配布)
本作品は2019/5/8から2019/8/3までの間に「小説家になろう」にて連載され、通算3,147人、6,388PVと大変多くの方々からご愛顧いただきました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
この度、「小説家になろう」を卒業させていただき、読みやすい縦書きに再編集し、電子書籍としました。
平成の時代に全国の自治体で起こっていた団塊世代の大量退職。
その時、食肉衛生検査所で何が起きていたか。
平成の時代の食肉衛生検査所のリアルな姿を、食肉衛生検査所の獣医師として長く勤めていた私がお届けします。
「衛生獣医、木崎勇介(食肉衛生検査所編)」